広島高等裁判所 昭和27年(う)459号 判決
第一、二点(事実誤認及び法令適用の誤)について。
酌婦としていわゆる醜業を営ませるために婦女を雇傭すること即ち婦女に売淫をさせることを内容とする契約は今日国法の禁ずるところであることは所論のとおりである。しかし今日の営業許可を受けた料理店、待合等は客の集会、飲食、娯楽のため場所又は設備その他のサービスを提供する営業を指すのであつて決して売淫行為を目的とするものでないことは勿論である。従つて右の営業に従事する酌婦なるものも亦正当の業務であり、該営業に従事させるための就業契約は単なる寄宿又は間借契約ではなくて雇用契約であつて職業安定法又は労働基準法の対象となりその保護を受けるものといわねばならない(事実上これらの従業者が接客の機会を利用して売淫行為をすることがあるとしても右はその者の任意の意思に基いて行われるに過ぎないのであるから前記就業契約の趣旨とは区別されねばならないものである)そして原判決によれば、被告人は業として判示の如く三回に亙り西川和子を判示待合業者である藤本甚太郎外二名方にそれぞれ酌婦として就業させる契約をし、同人等より仲介手数料として判示金員を取得したというのであり、右事実はその挙示する証拠によつて十分これを認定し得るところであり、記録に現われた諸般の証拠によるも右事実の誤認は認められないから、これに対し原判決が判示法条を適用処断したのは相当であつて原判決には所論のような事実誤認ないし法令適用の誤は存しない。